赤ちゃん・子育て
「赤ちゃんが夜泣きをするとは聞いてはいたけど…」
「夜泣きっていつまで続くの??」
多くのママ&パパを悩ませる育児の壁のひとつ、「夜泣き」。
せっかく寝かしつけたのに、夜中に泣き出してしまう赤ちゃん。
その泣き声を聞くたびに、「どうやったら泣き止んでくれるの?」と途方にくれてしまいますよね。
その気持ち、わかります!
そんな夜泣きに悩むママ&パパのために、今日からできる快眠サポートをご紹介します。
赤ちゃんが寝ている時の脳波などから「赤ちゃんの眠り」を研究し続けている玉川大学脳科学研究所・赤ちゃんラボの佐治量哉先生に、夜泣きのメカニズムや対策を教えてもらいましょう!
脳科学から眠りを考えるなんて、どんなお話しが聞けるか楽しみですね!
どうして夜泣きをするの? その基礎知識、間違っているかも!!
赤ちゃんはどうして夜泣きをすると思いますか?
「おなかが空いたから」
「甘えているから」
「だっこしてもらいたいから」
みなさんが思いつくのは「赤ちゃんの欲求」が多いかもしれませんね。
実は、夜泣きの原因はもっと複雑で、私たちが信じていることは違うこともあります。夜泣きについて少し科学的な考え方を知ることで、ママやパパの負担もぐっと軽くなるかもしれません。
“赤ちゃんのからだの不思議” をひも解きながら、夜泣きの新常識を一緒に解き明かしていきましょう。

夜泣きは脳が成長中の証?
夜泣きとは、一般的に生後6ヵ月ごろから見られ、18~30ヵ月くらいがピークとなる、夜間に突然起きて泣き出す現象のことです。
その原因は複合的で、「おなかがすいた」「おむつが濡れている」といった生理的な欲求以外にも、生活環境、体内時計の影響、心理的な要因など、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
そして今回、脳科学の観点からぜひママ&パパに知っておいてもらいたいことがあります。それは、夜泣きと脳の成長の密接な関係です。
脳の成長に必要なエネルギー
生まれたばかりの赤ちゃんの脳は約400g、生後半年で2倍、その後も緩やかに増加をし続け6歳ごろには1200g(大人の95%)に。ちなみに身長は生後半年で1.4倍、6歳で70%くらいですから、乳幼児期の赤ちゃんは脳の成長を先行させて、より多くのエネルギーをそこに費やしているんです。
さて、そのエネルギー源は、どこから来るのでしょう。大人は、経口摂取したエネルギーのうち約20%が脳で消費されます。これに対して赤ちゃんは、経口摂取したエネルギーのなんと6割以上を脳のために消費しています。こんなにエネルギーが必要な理由は、先ほど述べたとおりです。

そしてそれは夜の間もずっと続いています。
むしろ寝ている時間は、これから生きていくために必要な脳のネットワークづくり、つまり右半球と左半球の神経細胞をつなげたりする”大規模な脳の工事”が行われている時間帯ですので、たくさんのエネルギーが必要になります。
ですから夜泣きは、単におなかが空いているからではなく、脳が「成長に必要なエネルギーをもっとちょうだい!」と訴えていると捉えることもできるんです。
夜泣きのお世話をするのは本当に大変なことだと思いますが、「脳が成長しているんだ!」と思うと、ママ&パパも少しがんばれそうな気がしませんか?
【ちょっと豆知識】大人の体と赤ちゃんの体の違い
赤ちゃんの体脂肪率はどのくらいか知っていますか?生まれたばかりのころは15%くらい、その後生後半年で20%くらいに一時的に増加しますが、幼児期は15%程度が標準です。意外とたくわえがないのが乳幼児期なんです。大人と違って、乳幼児は体内に脂肪として蓄えているエネルギーが少なく、また腸の発達は体の中でもゆっくりなので、食べた食事からのエネルギーの吸収もうまくいかなかったりします。だから24時間体制で、少しでもエネルギーが不足すると泣いて教えてくれているのかもしれません。
寒さも夜泣きの原因に〜寒さと夜泣きの関係
脳科学の観点から、夜泣きのもうひとつの理由として考えられるのが「寒さ」です。
「赤ちゃんは暑がりだと思っていたのに!」というママ&パパのために解説していきましょう。
赤ちゃんは体温調整機能も発達途中

赤ちゃんの睡眠と体温には深い関わりがあります。
まず、赤ちゃんは、寝入り際に手足が温かくなります。これは、皮膚の表面の温度が高くなっている状態です。どうしてそんなことをするのかというと、睡眠中は”大規模な脳の工事”のために、脳の温度を1℃下げたいからなんです。しかし赤ちゃんは、私たち大人のように皮膚の放熱システムもまだ未熟、さらに表面積も小さいので、限られた場所(頭、手、足)から一気に熱を放出しなければならないんです。
「手足があたたかいから、そろそろおねむかな?」というのは、まさにこの状態です。
でも、寝入りから数10分ほど経つと、赤ちゃんの皮膚温も徐々に下がりはじめます。これは、もう放出する熱はないと判断しているからです。それ以上、熱を放出したら脳の温度が下がりすぎてしまうためです。
すこし生物学的な話をすると、人間の脳は暑さよりも寒さに敏感に対処するようなシステムになっています。つまり、体温が下がりすぎると脳の機能が維持できなくなり、生命の危機につながってしまうので、寒さには敏感に反応するんです。
つまり、赤ちゃんの睡眠を考えるときに大切なことは、寝入りは皮膚表面から熱を放出することを優先し、しばらくたつと皮膚表面からそれ以上熱を出さないようにすることを優先しなければならないという点。ですから、いつも不思議に思っているママ&パパもいると思いますが「よく動き回る、寝相が悪い」といった状態は、「熱を放出することを優先した結果」と考えることができます。また、もし赤ちゃんの脳が「寒い!」と感じたら、SOSとして泣くことがあると思います。
泣くことで体温が上昇!

赤ちゃんにとって、「泣く」ことは、ママやパパへのサインであると同時に、体温を上げる効果的な手段という新しい考え方もあります。赤ちゃんが泣いている時は、顔が赤くなって手足を動かすだけでなく、心拍数もかなり上昇していることが分かっています。つまり、泣くことで全身の血流が促進し、その結果として筋肉を収縮させて熱を産み出しているとも考えられるんです。
つまり、赤ちゃんの夜泣きは、脳が体温維持のために必死に指令を出している結果なのかもしれません。
夜泣きの原因のひとつ、温度管理のポイント
暑さ寒さの変化に敏感な赤ちゃん。そのため、睡眠環境の温度管理が夜泣き対策の重要なポイントとなります。
赤ちゃんは、寝入りの「熱を放出するタイミング」によく汗をかきます。汗をかくことで熱を効率的に放出できるからです(夏場の打ち水と同じ原理です)。ただ、赤ちゃんが汗をかける場所は限られていて、おでこや首周り、それから手足です。ですから、これらの場所をチェックしながら部屋の温度調整をしてあげてください。

【寒さ対策】
寝かしつけ時:
・寝入り始めは皮膚の温度が上昇するため、涼しい環境を心がけましょう。
睡眠中:
・皮膚の温度が徐々に下がるころには、保温ができるように調整しましょう。
・寝返りなどで布団がはだけることがあるため、スリーパーなどを活用するのもおすすめです。
【暑さ対策】
大人用布団:
・大人用の布団は赤ちゃんにとっては暑すぎて体温管理が難しくなることがあります。
・赤ちゃんには通気性のよい、薄手の布団やスリーパーを使用しましょう。
室温:
・暖房の効きすぎに注意し、適切な室温を保ちましょう。
・大人が少し肌寒いと感じる温度が赤ちゃんの寝入りには丁度良い温度の場合もあります。
授乳をしても、おむつを替えても夜泣きが止まない…それはママ&パパの責任ではありません!

ここまで読んで、
「なるほど、夜泣きの原因は生理的な欲求だけじゃないんだ」
ということがおわかりいただけたかと思います。
「じゃあ、いったいどうすればいいの!?」
「夜泣きに、どう付き合っていけばいいの!?」
そう思ったママ&パパも多いのではないでしょうか?
夜泣きは、赤ちゃんの成長過程における自然な現象であり、ママ&パパの育て方が悪いわけではありません。
もちろん、夜泣きを完全に無くすことは難しいかもしれません。 しかし、少しでも夜泣きの頻度を減らし、ママ&パパの負担を軽減するための工夫はあるので、安心してください。
夜泣き対策前に知っておきたいこと
夜泣き対策を始める前に、いくつか知っておいてほしいことがあります。
個人差があること
・赤ちゃんの成長スピードや睡眠パターンは、一人ひとり異なります。
・赤ちゃんの睡眠習慣にも個性があります。
根気強く続けること
・夜泣き対策は、すぐに効果が出るものではありません。
・根気強く続けることで、少しずつ改善が見られることがあります。統計的には年少さん(3歳半)くらいまでです。
ママ&パパも無理をしないこと
・夜泣き対策で一番大切なことは、ママ&パパが無理をして睡眠不足にならないことです。
・ひとりで抱え込まず、パートナーや家族、地域の支援などを活用しましょう。
今日からできる快眠サポート

赤ちゃんが快適に眠れる環境を整えることは、夜泣き対策の第一歩です。 今日からできる快眠サポートを紹介します。
生活リズムは早起きから!
毎日同じ時間に寝起きする
・体内時計を整えるために、毎朝の太陽光を浴びることが大切。そうすることで、体内時計がリセットされます。
午前中の太陽光を浴びる
・午前中に太陽光を浴びると、夜眠くなる時間が早まります。
寝る前にリラックスできる時間を作る
・絵本を読んだり、子守唄を歌ったり、赤ちゃんがリラックスできる就寝習慣を作りましょう。
寝る前に激しい遊びは避ける
・寝る前に激しい遊びをすると、興奮して寝つきが悪くなることがあります。
睡眠環境を見直そう
ライトダウンを合図にする
・部屋の明かりが暗くなることが眠りの合図となるようにしましょう。
適切な室温と湿度を保つ
・室温は20~22℃、湿度は50~60%が目安です。
快適な寝具を選ぶ
・大人の寝具のシェアはあまりお勧めしません。通気性のよい、赤ちゃんのための寝具を選びましょう。
寝る前にしっかりスキンシップ!

寝る前にスキンシップをとる
・ぎゅっとハグしたり、優しく撫でたり、スキンシップをとることで赤ちゃんは安心します。
寝る前に話しかける
・優しい声で話しかけることで、赤ちゃんは安心します。
安心できるアイテムを用意する
・お気に入りのおもちゃやタオルなど、赤ちゃんが触れるアイテムを用意しましょう。
それでも夜泣きが続く場合は、小児科医に相談してみましょう。 夜泣きの背景に、何か病気が隠れている可能性もあります。 また、専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な対策が見つかるかもしれませんよ。
睡眠中、声を上げたらすぐに“ケア”は間違い?
赤ちゃんの夜間の変化を敏感に察知できるママ&パパは、赤ちゃんが少しでも声を出すと赤ちゃんが起きたと思ってしまいますよね。そして、さっと抱き上げてあやすことも少なくないでしょう。
でも、睡眠中の乳児の脳波を調べてみると、動いたり、声を出したり、目を開けたりしていても、「脳は寝ている」ことがあることがわかっています。「寝ぼけている状態」とでもいいましょうか。この意味では、睡眠中にお世話をしたことが、かえって赤ちゃんを起こしてしまっている可能性も。
ですから、ちょっと声をあげたぐらいならすぐには抱き上げず、10~20秒ぐらい様子を見守ってみてください。そうすれば、赤ちゃんが本当に目を覚ましたかどうかがわかるはずですよ。
夜泣きによるママ&パパの寝不足対策も忘れずに

脳科学の視点から赤ちゃんの眠りを研究している佐治先生に、夜泣きの原因から、具体的な対策など、赤ちゃんの夜泣きのひみつを教えていただきました。
夜泣きは、赤ちゃんが成長していく過程で、多く見られる自然な現象です。
「夜泣き」とひと言で言っても、その原因や対策は多岐にわたることがおわかりいただけたかと思います。
もしかしたら、この記事を読んでいるママやパパの中には、「いろいろ試したけれど、うちの子には効果がなかった…」と、途方に暮れている方もいるかもしれません。
でも、どうか自分を責めないでください。
夜泣きには個人差があり、効果的な対策も赤ちゃんによって異なります。
赤ちゃんは泣きながら懸命に生き、成長しようとしているのです。
そして、夜泣きに寄り添って夜通し赤ちゃんのお世話をしているママ&パパ。ご自身の睡眠も大切に、赤ちゃんと一緒にお昼寝できるときはお昼寝をしてくださいね!
それからもう一つ。赤ちゃんは睡眠が足りないと思えば、きちんと昼寝で補っているしたたかなところもあるようです。ですから、ママ&パパも赤ちゃんが昼寝をしているときには一緒に寝落ちしてもいいと思います!
夜泣きに悩むすべてのご家族が、少しでも穏やかな夜を過ごせるようになることを、心から願っています。そして、もしひとりで抱えきれないと感じたら、迷わずに専門家や周囲の人に相談してください。
【監修】
佐治 量哉先生
玉川大学 農学部/脳科学研究所 脳・心・社会有効研究センター(赤ちゃんラボ)教授
筑波大学大学院工学研究科修了(博士(工学))。豊橋技術科学大学、東京大学、(独)科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」研究員、玉川大学脳科学研究所・助教、准教授を経て、現在に至る。東京大学大学院教育学研究科付属発達保育実践政策学センター・協力研究員、フェリシアこども短期大学講師、日本赤ちゃん学会・評議員なども務める。「乳幼児の発達と保育(朝倉書店)」分担執筆など。