赤ちゃん・子育て

こんにちは、編集部Kです。
連載『まいにちIKUIKU 〜毎日の行動・言動すべてが『まなび』になる!』では、毎日の子育ての中にある何気ないできごとを“魔法のことば『育(はぐくみ)』”のチャンスとして、「あれも学び、これも学び!」と子どもの成長につなげるヒントをお届けします。
最初のテーマは「あいさつ」と「おへんじ」。
お子さんの名前を呼んだら「は〜い!」と返してくれる瞬間って、最高にかわいいですよね。その「あいさつ」と「おへんじ」には、0〜5歳の脳や心、体の成長を大きくサポートする力があるそうです。
「どんなふうに、あいさつしたらいいの?」「いつから教えればいいの?」── そんな疑問を、教育者が教える具体的な声かけのコツを交えながら楽しくお伝えします。
さあ、一緒に「あいさつ」「おへんじ」の“すごい力”をのぞいてみましょう。
すごいゾ!「あいさつ」「おへんじ」の力
コミュニケーションの“はじまり”を作る、だいじなもの
「あいさつ」は、お互いを認識しあう行為です。「おはよう」「こんにちは」と言葉を交わすことで、「あ、この人は自分に興味を持ってくれているんだ」と感じ、相手との関係の“第一歩”を築きやすくします。
おへんじができると、友だちとの最初の壁がスッとさがる
あいさつの呼びかけに対して「はい!」と返事をしたり、「こんにちは」とあいさつで返したりすることで、さらにコミュニケーションがスムーズになり、次の会話に進みやすくなります。
「 おはよう」のあいさつで幸福感が生まれるよ
親や周囲の笑顔に反応して「おはよう」と言葉を発することで、“愛着ホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌されやすいという説もあります。
オキシトシンは子どもに安心感や幸福感をもたらし、脳内ストレスを抑える役割を果たします。
自分は大事にされている!と 自然と自己肯定感が高まっていく
赤ちゃんや幼児のころに育まれるコミュニケーションは、大きくなってからの人とのかかわりや心の落ち着きにとても大切だとわかっています。
人とのやりとりがうまくいったとき、子どもは「受け入れられている」「人と一緒にいるって楽しい」と感じます。そうした安心感は、「自分って大事なんだ」という気持ちを育ててくれて、これが自己肯定感のアップへつながっていきます。
※参考資料:日本小児科学会の2019年のレポートより
「あいさつ」「おへんじ」は脳内への影響が大!?
「あいさつ」「おへんじ」は、お互いを認識しあう行為です。「おはよう」「こんにちは」と言葉を交わすことで、「あ、この人は自分に興味を持ってくれているんだ」と感じ、相手との関係の“第一歩”を築きやすくします。
瞬時で脳内を活性化!脳へプラス効果をもたらす!?
「あいさつ」や「おへんじ」をする瞬間、子どもは表情や声のトーン、状況を一度に把握し、「この人はぼくに好意的なの?」「どういう感情でいるのかな?」など相手の様子を見ます。
そういえば……子どもって、こちらの顔をうかがいますよね。0歳の赤ちゃんでもこちらの顔をじっとみて何かを感じ取っているのがわかります。
言葉が話せるようになると、大人の様子を見て話したり、ときにコソコソ隠れたりして(笑)。
こうした子どもの脳内のマルチタスクの処理は、前頭前野(思考・判断力などを司る部分)を活性化し、認知能力の発達をサポートすると研究でわかっているそうです。
(Harvard University Center on the Developing Child, 2021)
姿勢もピン! 元気な声で印象を変える
相手を思って「あいさつ」や「おへんじ」をするときって、背筋が伸びたり、おじぎをしたり、元気な声を出したりしますよね。
こうした動きは、体幹や呼吸筋をきたえる手助けになります。
さらに、声を出すことで自分の気持ちを切り替えたり、次の行動へ移る合図にもなって、毎日の生活リズムづくりにも役立ちます。
※参考資料:NPO全国子育て支援協会『こども運動学ハンドブック』2020より
0歳〜3歳からできる「あいさつ」「おへんじ」をやってみよう!
厚生労働省の調査(2020)や子育て雑誌のアンケートでは、
「1歳頃にあいさつを始めてほしい」
「2〜3歳にはきちんと返事をしてほしい」
と考えるママパパが多いそうです。
とはいえ、子どもにはそれぞれ発達のペースや個性、まわりの環境があるので、一律に同じ時期とは限りません。
もし「まだ、おへんじをしない」「はずかしくて声に出せない」という様子でも、無理に強制はしないでください。
ママパパが笑顔で手本を見せたり、「一緒にやろうか?」とやさしく誘うことで、自然に「あいさつ」「おへんじ」をまねするようになるでしょう。
それでは、年齢別に「これなら挑戦しやすい!」というあいさつ・おへんじを具体的にご紹介します。
0歳●「おはよう」「バイバイ」
笑顔と身振り手振りでコミュニケーション
おはようの歌や声かけ
朝起きたら「◯◯◯ちゃん、おはよう〜!」と明るく声をかけ、赤ちゃんが反応したら「おはようって言ってくれたの? すごいね〜」と笑顔で返しましょう。
バイバイ遊び
外出前や寝かしつけ前に、親が手を振りながら「バイバーイ」と声をかける。赤ちゃんが手や指を動かす素振りを見せたら「バイバイしてくれたんだね!」と盛り上げる。
1歳●お手手をあげて「は〜い」
ジェスチャーと音声のまねっこをくり返して
「はーい!」の返事ごっこ
名前を呼んで「◯◯◯ちゃん、はーい!」と手を挙げて親が見本を見せます。
子どもにも同じように手を挙げてもらい、「上手におへんじできたね!」と拍手することでうれしさ倍増。
カンタンなフレーズを繰り返す
「まんま」「おいしい」「ばぁ!」など、子どもが言えそうな言葉を、表情豊かに何度もくり返します。
おへんじができたらその都度ほめてあげることで、「声を出す→認められる→また言いたい」の好循環を作ります。
2歳●「ありがとう」「ごめんね」
生活シーンで活躍するあいさつ&おへんじを増やそう
「おはよう」「ありがとう」「ごめんね」
朝のあいさつや、何かしてもらったときの感謝、失敗したときの謝りのあいさつなど、生活シーンに合わせて言葉をかけてみましょう。シンプルで短い言葉の方が覚えやすいです。
呼ばれたときの「はーい!」
この時期になると呼びかけに対するおへんじが上手になってきます。
親が根気よく声をかけて、おへんじをしたら「今いくね!」と一緒に行動に移せるよう意識づけるとスムーズ!
3歳●「こんにちは」「さようなら」「いただきます」「ごちそうさま」
基本的で大切なやり取りをはじめよう
「こんにちは」「さようなら」「おやすみなさい」
2歳頃に比べると、少し長めのあいさつができる子が増えます。
「おはよう」のほかに、「こんにちは」「おやすみなさい」「さようなら」と使い分けをおぼえたり、「ありがとう」「ごめんなさい」も加えたりして、日々のできごとに合わせて意識して声をかけてみてください。
「いただきます」「ごちそうさま」食事のあいさつも
食べ始めと終わりのけじめをしっかりすることで、メリハリある生活を送る基礎が身につきます。
「ごはんを作ってくれた人にありがとう」と言葉を添えると、感謝の気持ちも育ちます。
楽しく ♪ あそびの延長で身につけるテク
大人が日常でお手本を見せよう(モデリング)
子どもは大人の行動を“まねっこ”しながら成長します。ママやパパ、周囲の大人が笑顔であいさつをする姿を、日常的に見せることが何より大切です。
朝起きたら必ず「おはよう」、家族がそろったら「いただきます」など、大人が楽しそうにやってみなくちゃ、子どもはやりません。
カードや絵本で楽しさを演出しよう
家の壁や冷蔵庫、子どもの目線の高さに「あいさつのことば」を貼っておくのも一案です。
たとえば「おはよう」「ありがとう」のカードをイラスト付きで貼り、親子で指差しながら「何て言うんだっけ?」と楽しむ。絵本などを活用して、「あいさつがテーマのストーリー」を一緒に読んでもOKです。
「ほめる」「肯定する」で、お子さんの次の挑戦を後押しする
まだ言葉がうまく出ないときでも、声を出そうとしていたり、ジェスチャーだけでも示そうとしていたらすかさず「今、◯◯◯って言おうとしたの? すごいね〜!」と褒めてあげましょう。
失敗したり言葉が詰まっても、「チャレンジできてえらい」「ママ、今のおへんじ好き!」と肯定してあげることで、お子さんの次の挑戦をしっかり後押しします。
15年後・20年後に役立つ「あいさつ」「おへんじ」
土台ができているので、思春期でもコミュニケーションがとりやすい
幼児期のうちに親とのコミュニケーションが安定していると、思春期や青年期の人間関係の土台がしっかりするといわれています。
小さいころから「あいさつ」「おへんじ」などのやりとりが当たり前になっていると、反抗期が来ても最低限の会話が保ちやすくなるということもわかっているそうです。
「あいさつ&おへんじ」パワー、すごいですよね〜。
※参考資料:厚生労働省「子どもの心の発達と家族のかかわり」(2020)
大人になっても好印象の人になる
大人になると、面接や取引先とのやりとりなど、“最初のあいさつ”が相手の印象を大きく左右する場面が増えます。
小さいころから自然にあいさつやお返事が身についていると、大きくなってからも「話しやすい人だな」と思われやすく、周りからの信頼を得るチャンスも広がります。
グングン伸びる!自己肯定感とコミュ力
あいさつやおへんじの習慣は、人と気持ちよく関わる力を幼い頃から育むのにぴったり。仲間づくりやネットワークも広がりやすく、新しいことに挑戦するときも「いつも挨拶が気持ちいい子」として応援してもらいやすくなります。
まとめ:毎日の「あいさつ&おへんじ」が人生を豊かにする
「おはよう」「バイバイ」「はーい」「ありがとう」「いただきます」
──ほんのひと言が、お子さんの心や脳をはぐくむ大きなカギになります。
あいさつやおへんじは単なるマナーではなく、子どもの認知力・社会性・自己肯定感をサポートし、長い人生を豊かにする“根っこ”を伸ばすもの。
0〜3歳の頃はとくに、周囲の大人が温かくくり返し手本を示すことで、自然と習慣化していきます。
そして、幼少期に身についたあいさつやおへんじの習慣は、思春期や大人になってからも「人と関わるうえでの基礎体力」として生き続けます。
これこそ、毎日の行動・言動を“まなび”に変える魔法のことば『育(はぐくみ)』の真髄。
いつも使っているあいさつやおへんじのひとつひとつに、“未来をつくる力”が詰まっているのです。
親である私たちが日々の暮らしの中でちょっとだけ心がけることで、子どもは毎回“小さな成功体験”を味わえます。
それが積み重なれば、15年後、20年後に大きな花を咲かせてくれるはず。
ぜひ今夜から、そして明日の朝から、「おやすみ」「おはよう」「いただきます」「バイバイ」の言葉を、心をこめて子どもと一緒に楽しんでみてください。
家族のあたたかい一言が、お子さんの人生を豊かに育んでいきます。
(標準)【参考文献・引用先】
- 日本小児科学会「子どもの発達におけるコミュニケーションの重要性」(2019)
- 厚生労働省「子どもの心の発達と家族のかかわり」(2020)
- Harvard University Center on the Developing Child「Early Childhood Communication and Brain Development」(2021)
- NPO全国子育て支援協会『こども運動学ハンドブック』(2020) ほか